あなたが初めて家に来た日のこと、今でも覚えています。
キャリーから出てきた、二匹の小さな子猫。お父さんと一緒に新幹線に乗って来たんだよね。
あの頃のあなたは本当に小さくて、当時中学生だった私の手のひらに乗ってしまうほどでした。
ちょっとおてんばなあなたは元気に育って、一年後には新たに二匹の子猫を産んでくれたね。
あの日のことも覚えています。低いうめき声をあげながら、必死で命を産み落としたあなた。
あの時私は、きっとこれほどまでに尊いことって他にないだろうなって思ったんだよ。
お母さんから、あなたが亡くなったと連絡がありました。
最初は信じられなかった。でも「これから火葬に行ってくるね」といって箱の中で丸まったあなたの写真が送られてきたとき、これが現実なんだと思いました。
あなたは乳がんを患っていたんだね。
お母さんからあなたの最期の様子を聞いたよ。苦しんで、苦しんで、壮絶だったと言っていました。
あなたのようないい子が、どうしてそんなにつらい思いをしなくちゃいけないんだろうって、すごく思います。
とても、とても、頑張ったんだね。
年は越せないかもしれないとお医者さんに言われていたのにここまで生きてくれて、直前までごはんも食べてくれてたからあの子はえらいって、お母さんが褒めていたよ。
何より、どんなにふらふらになっても粗相は一度もしなかったと聞いて、本当にあなたらしいと思いました。あなたは昔からずっとそういう子だったね。
私は家を出てしまったから、あなたがいない家というものが今も上手に想像できません。
これからも、帰省したらドアの前でにゃーにゃー言いながら足元に絡まってきてくれるとしか思えないのです。
あなたがもうこの世にいないという事実を、どうしても受け止めきれません。
ずっとみんなで暮らしてきたでしょう?今になって、ひとりぼっちで遠くに行っちゃうことないじゃない。
春が来たら16歳。
年齢から考えたらおかしくないことではあるけれど、心のどこかで、あなたはずっとずっとここにいてくれるんじゃないかと思っていました。
わがままで、甘えんぼで、女王様みたいなあなたでも、やっぱり遠くに行ってしまうんだね。
あなたがいなくなったと聞いてから、私はあんまりごはんも食べられないし、気を抜くと泣いてしまうし、今もいっぱい泣いています。
お母さんも泣いていたし、お父さんも毎日、あなたが使っていた黄緑色のクッションを抱きながら泣いてるって。
みんな、あなたのことが大好きだから。
大好きなあなた。
あなたはとってもとってもいい子でした。とってもとってもかわいかった。
もっと会いたかったし、したかったこと、してあげたかったこと、たくさんあります。
でも、お骨になったあなたに「戻ってきて」なんて言ったらあなたは絶対に嫌がるから、それは言いません。
あなたにはたくさんのものをもらいました。あなたと暮らせて本当によかった。
生まれてきてくれて、生きてきてくれてありがとう。
2月9日に旅立ったあなた。
あなたのいる場所が、あたたかくて柔らかい場所であることを願っています。