ホストにハマる女の子たちの心情に興味があった。
彼女たちの献身はすごいんですよ。ボロボロになるまで働いて、そのお金を全部「担当」のために捧げて。
それで幸せならともかく、大金を使っても嫌な気持ちや悲しい気持ちで帰ることもしばしばあるというし。
一体何が彼女たちにそこまでさせるの!?と気になってしまって。
てことで、こちらの本を読みました。
宇都宮直子さんの「ホス狂い~歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る~」です。
ホストに貢ぐ「ホス狂い」の女の子たちを取材したルポです。
なかなか面白かった。著者さんのサバサバしたお人柄が素敵でしたww
結論から言ってしまえば、歌舞伎町では「たくさん稼いでたくさん使う」ことが何よりも正義で、その空気や価値観が肌に合う子はどんどんハマっていくし、そうでなければ抜けていく、って感じなのかな。
でねー……ホストとホス狂いちゃんの関係って、なんだか想像していたのとはちょっと違ってましたね( ˘ •ω• ˘ )
一般的に、ホストってのは女性をたぶらかしてお金を使わせる悪い男の人で、それに引っかかっちゃう女の人は可哀想な被害者……みたいなイメージがあるかと思うのです。
でも別にそうでもないなって。というか、私はホストの男の子側にも割といたたまれない気持ちになってしまった。
数年前に、女の子がホストを刺して捕まった事件があったのご存じですかねヾ(・ω・`)
犯人の容貌のかわいらしさと、「好きで好きで仕方なかった」という犯行動機のエモーショナルさで話題になった事件なんだけれども。
この被害者の男の子、今でもホストやってるんですってね。
お客さんから殺されかけるなんてトラウマになってもおかしくないのに、また同じ場所で同じ仕事をしてる。
彼にも取材しているんだけど、それについて「自分は施設育ちで、ここしか戻る場所がなかったから」って言ってて、なんだか悲しくなってしまいました。
他にも、見た目は大物ホスト感があるのにいまいち言動がズレてる男の子とか、これまたお客に包丁で刺されてるのに「でも優しい子で救急車を呼んでくれたから許しました」って言ってる子とか、読んでてちょっと痛ましさを感じてしまった。
そもそもよ。
毎日何十万何百万と売り上げるような男の子たちならさぞや良い暮らしをしているのではと思いきや、どうにもそうは見えないのよね。
もちろん服飾品のような見栄に繋がる部分にはお金がかかっていそうなんだけど、生活が豊かかというとそうでもなさそうな雰囲気で。
ほな、毎夜飛び交う目の眩んでしまうような大金は、一体どこに収まっているんですかねぇ……:(´◦ω◦`):
女の子の方も、お金がたくさん要る性質上多くの子が体を売る仕事をしているようなんだけど、どうしても精神的に病むタイプの仕事だから、それをフォローするのがホストの仕事、みたいな感じらしい。
つらい思いをしてお金を稼いで、それを持ってホストクラブに行って、ホストが「君は頑張ってるよ」とかなんとか言って、「ありがとう私もっと頑張るね」って言って大金を使って、また稼ぎに行って、病んで……みたいな。
循環ができているというか、もはやそういうカルチャーなんだなって感じです。
あと、想像以上に歌舞伎町という街はコミュニティー色が強いんだなーって。
たぶんだけど、ホス狂いちゃんって他のホス狂いの子との接点がなかったら、こんなに沼に嵌ることないと思うんですよね。
「みんなやってる」とか、「ここではこれが普通」とか……仲間意識の強いコミュニティーだからこそ、どんどんそういう価値観に染まっていってしまうんでしょうね。
まあもともと染まりやすいタイプの子だからこそここに辿り着いてしまうというのもあるでしょうけど。
第三章に出てくるYouTuberのあおいちゃんが「歌舞伎町は"共感"の街で、ここのコたちは依存心が強いコが多くて、でもみんな優しい」的なことを言っていて、なんだかとても腑に落ちた感があります。
前々からなんでホス狂いの子たちはみんな揃いも揃ってMCMのピンクのリュックを背負ってるんだろうと気になって仕方なかったんだけど、それも彼女たちの同調意識の強さの表れだと思うと納得です( ˘ω˘ )
最近も時々ホストとそのお客さんのあれこれがニュースになっていたりして、そのたびに「ホストを規制することが女性を救うことになる」的な言説が流れたりするけど、果たしてそんな簡単なものかな……と、この本を読んで感じました。
健全かどうかはさておき、歌舞伎町という街が一定の層に対する受け皿になっているのは確かだと思うから。
私は特に男の子の方が心配になる……歌舞伎町にしか居場所のない子や、ホストとしてしか生きていけないタイプの子は、ここがなくなったらどこに行くのかなーなんて、そんなことを思ってしまいました。
あとはたまにお客さんに暴力を振るうホストが取り上げられては「まあひどい!クソ野郎!」みたいな雰囲気になったりするけど、当人たちとしてはそういう激情的な関係が「エモい」だったりもするから、なんともいえないですよね。
真っ当な感覚だけでは測れないものがある世界だと思います。
そんなこんなで。
なかなかエキセントリックなエピソードも多く、それでいて諸々考えさせられてしまう、そんなルポでございました。
そうそう。著者さんが取材するにあたって住み込んでいた歌舞伎町のヤクザマンション、かつてヤクザルポライターの鈴木智彦さんも住んでらした所と同じ(たぶん)で謎の感動を覚えましたww
鈴木さんはかつて上からヤクザが降ってきたと書かれていたけど、此度の著者さんは上階からソファーや棚が投下されてきたと書かれていて、この物件もお変わりないようで何よりです(?)